「ネウロなんて嫌い」



事務所の前の扉で、蛆虫がそう鳴く声が聞こえた。
一体何が可笑しいのか、その声は震えていて、嫌にきんきんと耳に響いた。耳障りだ。
薄い扉越しに、ミジンコの姿は見えない。ただ声とそこにいるという感覚だけが分かるのみで、それは酷く曖昧に思えた。


「ネウロなんてだいっきらい」


生ゴミはまたつまらんことを繰り返す。さっきからこればかりだ。
嫌い、大嫌い、嫌い、嫌い、嫌い。
我が輩だって同じだ。何を今更当たり前のことを繰り返すのだ?



「もう帰る」



扉の前の豆腐が立ち上がる気配がした。
そうだ、帰ってしまえ。
その方がせいせいする。



(そしてそのまま二度と姿を現さなければいいのに、
なんて)




「ネウロなんてだいっきらい」



我が輩だって、お前なんぞ嫌いだ、ヤコ。



***




どうしていつもいつも、こうなってしまうのだろう。
泣いても泣いてもネウロは私のことをゴミだの蛆虫だのと言い続けるだろうし、それはいつまで経っても変わらない。
そんなこと分かってる。
でも私は時々こうしてたまらなく泣いてしまい、こうしてネウロから逃げ帰る。
逃げても、あいつは追いかけてくるのに。
逃げても、あいつは待っているのに。


「…ふぁ…」


涙が止まらない。口からも涙の言葉がぽろぽろと落ちていく。
道行く人が私を振り返るけれど、それさえも知らんぷりして走り続ける。


ネウロなんて、嫌い。
だいっきらい。


(もう二度と会いたくないのに、
それなのに、)

***

「大嫌いだ、ヤコ」


***

「ネウロなんて嫌い」



***

(もう来なければいいのに)


***


(もう現れなければいいのに)










それなのにどうしてまた、

出逢ってしまうのだろう。






『相互不可信』








恋してるからに決まってるでしょうが。
お互い信じてないのに惹かれ合う二人。お題と合ってるのかしらげふふん。
そしてこのページ見にくくてごめんなさいげふふんふん!






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