我侭さえも愛せたら
安形会長がにちょっかいかけてくるのでボクは大変困っている。は可愛くて性格もいいからからかいたくなる気持ちも分かるが、ボクの目の前では大概にして欲しい。い、いや、ボクの目の前以外でだってお断りだ! いくら生徒会長でもこれはいい加減に言わなくてはと思い、ボクはとうとう叫んだ。 「安形会長!いいかげんをからかうのは止めて下さい!!」 「おほっ」 すると会長はよく分からない返事を返し、笑った。ボクは困ってしまう。 「椿君すごい困った顔してんね」 きょとんとした顔でがボクを見てくる。ボクはそんなさえも可愛いと思うのだが、でも今はそんなことを思っている場合じゃない!! 「もだ!どうして生徒会室で遊んでいるんだ!」 「遊んでんじゃないよ。安形の仕事手伝ってんだよ」 そう言って彼女はまた書類の枚数を数えはじめた。そうだった会長がを呼んで仕事を手伝わせていたんだっけ。そんなことを忘れるなんて、ボクは本当にどうかしている。 「ありがとなー。あとでなんかおごってやるからな」 「わぁい!あたし駅前のみたらし団子がいいな」 「お前は本当に安上がりな」 「失礼ね!」 安形会長に向って笑う。ああどうしてだ?どうして、胸がこんなにもやもやする?どうして、安形会長消えてくれなんて思うんだ? 「椿も早く仕事終わらせなよ、ね?」 にこりとは笑う。ボクの目の前には山ほどの書類があり、とてもじゃないが終わりそうもない。どうしてか今日に限って会長が山ほど押しつけたなんて、言い訳がましいことを思ってしまう。 「俺はもう終わるぜ、椿」 にやにやと会長が笑い、ボクはいっそう黒く黒くなる。この黒い塊を吐いてしまえば楽になるのだろうか。ああでも吐いてしまったら誰かを傷つけてしまいそうだ。それが怖くてボクはぜんぶ飲み込んでしまう。 「安形、こっちも終わったよ」 「おお、さんきゅな、」 そう言ってわしゃわしゃとの頭をぐしゃぐしゃにして、会長は笑った。それがいつものような黒い笑みではなく優しい微笑みだったので、ボクはもう泣きそうになる。 「ほんじゃ、帰るか。椿戸締まりよろしくな」 「…はい」 会長はと仲良く部屋を出ていこうとした。ああ出ていくがいいさ。ボク一人を置いて出ていくがいいさ。せっかく飲み込んだ黒いものが、出ていきたい出ていきたいと暴れる。 ああ、お願いだボクは会長のことを嫌いなんかじゃない。のことだって、もちろん、 「椿」 出ていくその瞬間、が振り返ってボクの名前を呼んだ。その顔はどうして、ひどくひどくボクを見つめていて悲しそうだった。口が何かを紡ぎ出そうとしたけれど、彼女の口から出たのはただの空気だった。 だからボクは立ち上がり彼女の前に進み、思い切り彼女を抱きしめた。 「行くな」 精一杯の声でそう言うけれど、なんだか泣きそうな声だった。 「ボクの仕事が終わるまで待ってくれ。そうしたらみたらし団子を買って上げるから。ボクはと一緒に帰りたいんだ」 「つば、き」 目の前に会長がいて、ボクは会長に向って思い切り睨みつける。(ああこんなことをしたら後で怒られるというのに!) 黒い塊が口からどんどん出る。醜い言葉、汚い思い、でもどうしてだろう。口にするとそれは涙に変わっていった。 「あんまりボク以外の人の前で、笑わないでくれ。は可愛いから、みんなを好きになってしまう。ボクはそれがとても不安なんだ」 かわいいかわいい君。 本当は閉じ込めて、独り占めしたい。 でもそんなことをしたら君が悲しむから、ボクは籠の扉を開けるよ。 でも、分かっていてほしいんだ。 「でも、ボクが、ボクが世界で一番のことを好きなんだ」 そうして、誰にも渡さないというようにきゅうと抱きしめる。 涙は彼女の肩に落ちきらきらと光る。そうして気が付くと、会長が馬鹿笑いをしていた。 「かっかっか。、心配することなんてねーじゃねーか」 「え?」 意味不明な言葉にボクは会長を見る。そしてを見る。の顔は真っ赤で、少しだけ涙ぐんでいた。 「ごめんね、椿」 「え?」 「あたし、心配だったの。椿副会長で人気あるのに、あたし、椿と付き合っていていいのかなって。椿はあたしのこと、ちゃんと好きなのかなって」 「な」 「だからね、安形に協力してもらって、やき、も、ち、やかせよう…と…」 ごめんね、と彼女が笑うと涙がするりと落ちた。ボクはそれを拭ってやる。 ああそうか、君はボクにやきもちを焼いてほしかったんだね。そんなものいつでもしているというのに。 「可愛いな、」 「え」 「ボクはが一番好きだ」 そしてよりいっそう力を込めを抱きしめる。 安心して。この力は君だけのものだから。 安心して。泣くその涙さえボクは好きだから。 安心して。君の全てが愛しいから。 ああ君が世界で一番好き! 「安形昨日はお疲れ〜」 「道流か…俺今自殺しようかと思ってたところだぜ」 「ちゃんと椿ちゃんが相思相愛なのは分かってんだから、そんな役目引き受けなきゃいいのに」 「一パーセントの可能性に賭けたんだよ!そしたら一パーセントどころかマイナスだったんだよ! 仕方ないから椿の仕事倍に増やしてやったぜ」 「(そんなんだからちゃんが安形好きにならないって分かんないのかなぁ)安形って意外と馬鹿だよね」 ----------------------------------------------------------------------------------- 一番可哀想なのは安形\(^o^)/ 最近椿かわいそすなのしか書いてなかったのでたまには、ね! 乙女なんでやきもち焼いてほしいとか思うんですけど、相手は意外なところでやきもち焼いてたりとかね。 でもたまには言葉に出して言ってほしいのよ好きだってね!なんてね。 タイトルは「repla」さまから。 2009/1/9 |