ハッピーバレンタイン!


『あなたにあげるのは甘いものがいい。とびきり甘くて舌がとろけそうなやつ。
あなたにあげるのは儚いものがいい。吹けば消えてしまいそうなかすかなやつ。
あなたにあげるものは涙を一粒落とし込む。あなたのことを思って泣く涙、あなたのことが好き過ぎて泣く涙、そんなものを入れてあげるね』

そこまで読んで本を閉じ、眼を天井に向ける。長い時間読んでいたので眼をぱちぱちとさせる。でも実際は疲れてなんかいない。私の眼は丈夫で、どれだけ本を読んでいたってしんどくなることはない。
学校の図書室に、今はひとり。と思ったのだけれど、いつ入って来たのか、椿が後ろから声をかけてきた。
「ああ、こんなところにいたのか」
私は振り向いて、椿の手にも本が握られ私はにこりとする。どういうわけか、私と椿の本の趣味はとてもとても合うのだ。だから私は椿とよく話をする。
椿は賢い癖に可愛くて、私はにやにやとしてしまう。会長がいじめたくなる気もすごくすごくよく分かる。
「ねえ椿君。今日はバレンタインデーだと知っている?」
「ああ。だがそれがどうした?」
口ではそんなことを言うけれど、顔を赤くして眼をそらせきょどっているところは、ああもう可愛いったら!
何も言わなくても期待してることなんて知ってるわ。私からのプレゼント、欲しいんでしょう?
「バレンタインデーとはそもそも、バレンタインというローマの司祭が殺された日なの。人が死んだ日に私たちは喜びはしゃぎチョコレートを投げ合っているというわけ。だから私はバレンタインさんの冥福を祈って、今年は誰にも何も渡さないことにしたわ」
そう言うと椿は大変悲しそうな顔を一瞬だけ見せて、すぐにきりりと口を結んだ。
「ああ、それがいいだろう」
手がぷるぷる震えているのが見える。うああああ可愛い。どうしよう、にやにやしそうな頬を急いで本で隠す。
「椿君は人気者だから、きっと沢山もらったのでしょう?」
「全て没収しただけだ。学校に勉学に不必要なものを持って来るのは校則違反だ」
「頭固いわねえ。そんなのだから、彼女が出来ないのよ」
そうふざけると、椿の頭がぼん!と爆発してしまった。私は少しやりすぎたかなと思って、いい加減椿に本を渡す。
「椿君、これ、面白い本だから、あなたに貸してあげるわね」
「あ、ああ。ありがとう
それじゃあね、ばいばいと手を振り図書室を出ていく私。
椿が本を読むのはいつだろうか。そしてその本が、とても甘い恋愛ものだと知ったらどうするだろう。
そうしてその本の隙間に挟まっている、私からのメッセージを見たらどうなってしまうのだろう。
分からないけれど、きっと椿は可愛くて慌てふためくことを想像して、私はにやりと笑った。


『私、あなたが好きかも知れないの』


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バレンタインに今年はクッキーとパウンドケーキ作った。
パウンドケーキは美味しかったのでまた作りたいです。
クッキーは今度クッキー作り大会開きます。
2009/02/14






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