「うん、何、椿」

「うん。何だよ」

「…しつこいよ」
何度も何度も名前を呼べば、その度に違う反応を示してくる。それが何とも興味深くて、ボクはまた彼女の名前を呼んでしまう。

「椿君、もういい加減しつこいでちゅ」

「温厚なちゃんも怒っちゃうよー?殴っちゃうよー?」
「…それは困るな」
初めて名前以外のことを言えば、は呆れたような顔をした。
「ボクを殴ってが怪我しては堪らない」
「…お前は…」
ほんとに殴っちゃろうか、とはぶつぶつ言っている。そんなの手を持ってみる。
「なんじゃらほい」
の手は小さいな」
「椿もあんまり大きくないよ」
「ボクは男だ。それなりに大きいが、の手は、本当に小さい」
小さくてすべすべしている。爪は奇麗に長くて、美味しそうだ。
…?ボクは何を思っているのだ?
「椿くん、いい加減帰りましゅよ。もう校舎には誰も残っていないでしゅよ」
「む、すまんな、遅くなってしまって」
「全くでしゅ。おわびに帰りにアイスおごれでしゅ」
「帰り道の買い食いは校則違反だ」
「あーもー椿はお堅いなぁ!そんなんだから彼女できんのだよ君は」
「彼女なんかいらない」
きっぱりとそう言ってみせると、は驚いたような顔をした。
あんた、モテんのに。生徒会副会長で勉強ばっちし出来て先生からの信頼も厚くて、あとは彼女いればオールオッケーじゃない?と彼女は首を傾げた。
「そんなものもいらない」
「おぉい!お前どんだけ浅ましいんだよ!お前の持ってるもん欲しくったって手に入らないやつなんざたくさんいるんだよ!ハゲかお前!もうハゲろ!ハゲハゲ!!」
「ボクにはがいればいい」
そう言って強く手を握る。
ボクの手の中での手は汗ばんで小さくなって、握りつぶせてしまいそうだ。
でもボクはそんなことしない。そんなことしたら、彼女の手を二度と握れなくなるからだ。
「ボクは、以外のものはいらない」
そう言うと、は、意外だね、とうつむいた。
あんたは完璧主義者だから、全部を手に入れたいのだと思っていたよ。
そしてその中に、あたしなんて、入っていないんだと、思ってたんだ。
「入っていないどころか、はボクの中で一番大きい位置にいる」
だから、お願いだ。
「ボクの隣にいつまでもいろ」
「…こんな時まで命令形かよ」
「む、違う、その、これは、」
「わかってるよ。椿はね、馬鹿なんだよ」
「ボクは馬鹿ではない」
「馬鹿で正直者でまっすぐすぎるから、あたしはいつも、それに負けちゃうんだよ」
はボクから手を離した。一瞬寒くなったボクを、受け止めたのはやっぱり、彼女だった。

「抱きついていいですよ、副会長殿」
両手を大きく広げて真面目な顔でそう言う彼女をもちろん抱きしめた。
ああ、神様。
ボクは本当に何もかも捨ててもいい。
ただどうぞ、ボクのだけは、奪わないでいて。






全てを手に入れたのではない、


手に入れたものが全てなのだ


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ツバキン最強に可愛いよね。
ちなみにこれがミッチーだったら器用に色んなもんを手に入れられる。安形だったら全部自分のものにしてみせる。
というわけでお題に合うのは椿しかいなかったのだよ。よく考えると生徒会メンバー最低だな!
ちゃんが使っている「〜でしゅ」はぽkもんに出てくるシェイミの口ぐs(やめれ)
お題は「repla」さまから。







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