先輩、これ、受け取って、くだ、さい…」
か細い消えそうな声で、女子がに手紙と綺麗な小包を手渡してきた。本当に興味のない顔で、はそれを無視する。ごめんね、も、すまない、もなしに。
「あ、あのっ、先輩っ」
「俺に関わるな」
第三者に話す時は、出来るだけ「俺」で。言葉は冷たく、女生徒はしくしくと泣き出したがには関係なかった。
受け取れというのか?でも私は男じゃない。こんな格好をしているけれど、女と付き合うほど男になったわけじゃあない。
そのままは廊下を渡って、教室に入った。

「…最低だな」
ボッスンは以上の様子を見ながら呟いた。
「ホンマやなー。ボッスンなんか女の子にプレゼントされたことなんかあらへんのになぁ」
「ちょ、ヒメコ今オレのことは関係ないの!ねっ!」
『ちなみに俺はあるぞ』
「スイッチも今は関係ねえだろぉおおおおお」
ボッスンはスイッチの首を締めながらがくがくと揺さぶる。
『ちょwボッスン苦しw』
「うるせーよ!」
なんで自分がこんなにイライラするのか、ボッスンにも分らなかった。
ただ、どうしてはあんなに冷たい目ができるのだろう、と思っていた。




ノット・ヒーロー



イエス・ヒロイン






「と、いうわけでお願いなの王子!」
「ええー」
「あ、ごめん。やり直すわね」
そう言って浪漫はにこりと笑った。

「お願い王子!私を助 け て ! !」

「おま、いくら小説だからってぇええええええ。作者もこの連載小説は真面目にするかギャグにするかで迷ってんのにそんな太字とか色文字とか惜しげもなく使いやがってぇえええええ」
「大丈夫よ王子、浪漫は最強なのだっ☆」
そう、今スケット団の部室にいるのは、早乙女浪漫。ストーリーブレイカーの彼女がソファーに座ってヒメコ特製の茶をすすっている。
お茶はもちろん日本茶なんかじゃなく、ジャスミンティーよ。あっ私が本当に好きなのはあま〜いミルクティーなんだけどね☆漫画を描きながら、休憩がてらに飲む紅茶は本当に最高なのっV
更にその合間に愛犬のベクティーと戯れながら、私は漫画のアイデアを練るの…それでねそれで
「もうええわぁー!!頼むから作者の喋るところまで乗っとらんでくれ」
「あっ浪漫失敗☆」
てへ、と舌を出しながら少女マンガちっくに、頭をこつんとする浪漫。誰か助けて。
『それで、何か依頼があるんじゃないのか?』
「あっ、そうなのそうなの!そうなのだ☆」
「なんだ?」
もう何も突っ込まない。
「あのね、お願いがあるの!あのね…」
浪漫の次の台詞を聞いて、スケット団の三人は渋い顔をした。
それが浪漫の依頼だからというわけではない。その依頼が、とても難しいものだったからだ。


「ってわけでよぉ」
ここまで話を聞いてくれただけで成功みたいなもんだ、とボッスンは思うことにした。
顔はてんぱっていて今にも泣きそうなのを、影から見守るヒメコとスイッチが応援していた。
ボッスンの目の前にはがいる。はボッスンなんていないかのように、本をめくっている。
ここは屋上。風が強くて、抑えていないとページが独りでにめくられてしまう。
「浪漫の漫画のモデルになってくんねえか?」
返事はなし。ちらりとも見てくれない。ボッスンはヘルプを頼んだが、ヒメコとスイッチは「がんばれ」というジェスチャーをするだけだった。
「お、お前が浪漫の新しい漫画の主人公にぴったりだって…だから、その、」
は本を閉じた。そして立ち上がる。
一瞬、ちらりとだけボッスンに顔を向ける。その目はとても冷ややかだった。
もし、それが他の人なら。
ボッスンはただただてんぱって後で泣くだけだったかもしれない。
けれどもの目があまりに冷たくて、本当に何の興味も湧かない、死んだ目だったからかもしれない。ボッスンは気付いたらの制服の首元を掴んでいた。
「お前!何なんだよ!」
今までたまっていた思いが一気に噴き出すように、ボッスンは叫んでしまっていた。
くるりくるりと色んな場面がフラッシュバックされる。転校初日に吐いた冷たい言葉、そっけない態度、人を小馬鹿にしたような立ち振る舞い、そして泣いた女の子さえどうでもいいというような背中。そんな全てがボッスンには許せなかった。人を助けたい、人を救いたいと思っているボッスンには、の存在が信じられなかった。
どうしてそんなに、人を馬鹿にしたように生きる?
どうしてそんなに、人に冷たくできる?
傷つくのは自分なのに。
「浪漫は本当に頑張ってんだ。その為に手伝ってやろうとか、思わねえのか!」
次から次へと言葉が出てくる。それは全部今までのうっ憤だった。
「それで楽しいのかよ…!!」
ヒメコとスイッチが慌てて飛び出してくる。でもボッスンには止められそうになかった。
ひやり、とボッスンの手に冷たい手が重なる。それはの手だった。の目は冷たいけれど、死んだ目ではなくなっていた。奥にぎらりぎらりと何かが煮えたぎっている、そんな目に変わっていた。
「楽しくなんてないさ」
吐き出すように、が言った。
ヒメコとスイッチが立ち止まる。いつの間に来たのか、浪漫も二人の後ろに立っている。
「楽しくなんてない。でも、私はそう生きると決めたんだ」
それは同じ十七歳とは思えない低い重い声だった。それを聞くとボッスンは、本当にを殴りたくなった。
「馬鹿じゃねえのか!」
「自分が愚かなんてことは、知っているさ」
自分さえも馬鹿にするようには笑った。ボッスンの振り上げた拳を遮ったのは、ヒメコだった。
「ボッスン、わかっとる。わかっとるけど、やめとき」
『こんな奴殴る価値さえない』
スイッチが冷たい合成音声で言う。それを聞いては笑った。
「そうだな。お前は殴る手もふさがっているみたいだしな」
「おま…!」
「王子、もういいの。やめて」
一人、落ち着いた声で浪漫が言った。浪漫はつかつかとの前に出てきて、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。私が変なことを言わなければ、さんも嫌な気持ちにならなかったのに」
「浪漫!」
「あんたがそんなん言わんでええねん!」
「でもね、私、あなたはきっと、素敵な主人公になると思ったのよ」
てへへと浪漫は笑って、を見た。不思議な眼で、はいつものような冷たい目で見返すことができなかった。
だからぐっと拳に力を入れて、言い放った。
「私にヒーローは無理さ」
私には無理。
だって私は、今もこうやって、誰かの真似しか出来ないのに。
誰かの影を踏むことしか出来ないのに。
性別も、見た目も偽る私はヒーローになんてなれないさ。
けれども浪漫は言った。素敵な声でこう言った。
「あら、そんなことはないわ!あなたなら、とっても素敵なヒロインになれると思ったのよ」
きらきらと浪漫は笑った。はそれを聞くと虚を突かれたようになってしまって、もう何も言えなかった。さっきまで怒っていたボッスンもヒメコもスイッチも、ぽかんとする。
「あなたはとても綺麗だもの。ね、さん」
にこりと笑いかけられて、は思わず顔を隠した。その顔を見たボッスン、スイッチ、ヒメコがぎょっとする。
の顔は、真っ赤だったからだ。
「な、なにを」
「ねえ、じゃあ、お友達になってくれる?」
「え」
「それで、もし気が乗ったら是非、私の漫画のヒロインになってほしいわ!」
浪漫はの手を乱暴にとって、ぶんぶんと振った。不快だとか思う前にはなすがままにされていた。
この手はとても温かい、そんなことを、思いながら。


(私はヒーローなんかじゃない
けれどヒロインになりたいわけでもないんだ)


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ストーリーブレイカー浪漫…!!!やってくれたぜ…!!! 。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ
あ、これは真面目に行くつもりですよ。でも時々ギャグ入れるかで迷うんだ…。
ちゃんお友達出来て良かったね。もうちゃんの性格最悪だとか言わないでね。彼女も色々あるんです。徐々に皆と打ち解けられたらなぁ〜と激しく思います。
浪漫は動物的本能でちゃんのこと分かりました。スケット団の三人はこれで気付くのかどうか…?
次号に期待!でも何にも考えてないよ!! ( ゚ 3゚)≡@ ペッ!!
2009/02/27























































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