「ねえ、その制服で本当に良いの?」
母が聞いて来ては頷いた。
「ああ、これで良い」
「でもねえ、ちゃん。それ凄くよく似合ってるんだけど、でも、でもねえ」
「いいんだ」
玄関で革靴を履き終わるとは立ち上がった。硬くてまだ慣れていない感触が冷たかった。外はまだ少しだけ寒いだろうか。いいや、もう四月も半ばなのだ。寒いわけがない。
何も言わず扉を押したの後ろから声が聞こえる。
「いってらっしゃい、ちゃん」
その返事はせずには扉を閉めた。いってきます、なんて私に言えるはずもない。





四月の三週目の



転校生





『今日転校生が来るらしいぞ』
スイッチがそんなことを朝一番に言ってきた。ボッスンはそんなことよりもトランプタワーを作るのに夢中だったのであまりよく聞いていなかった。
「え、今日?もう新学期始まって結構なるで?」
ボッスンの代わりに、タワーの完成を見守っていたヒメコが返事をする。
「あと、スイッチにしては情報が遅いなァ。いつもなら一週間前には分かるはずやん?」
『サーセンwwwm(。・ε・。)mただ職員室でもこの転校生の話題はオフレコでな。さっきついうっかり口を滑らしたチュウさんから聞いたところだ』
「またチュウさんかい!あの教師ほんまロクなことせんな。でもなんでやろな」
『俺は転校生が実は死神なのだと考えているのだがどうだ?』
「お前は真面目なイケメン顔でそんなことゆうなや!イケメンの無駄遣いやねん!!ほれ、そんなこと言っとるあいだに」
「でっきたぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ヒメコの言葉を遮ってボッスンが勢いよくゴーグルを外した。目の前の机の上にはとんでもない高さのトランプタワーがあった。思わず周りのクラスメイトからも拍手が漏れる。
「すごい!すごいでボッスン!これ新記録とちゃう!?」
『凄過ぎて逆にヒくな』
真顔でスイッチが述べる。するとボッスンが泣きそうな微妙な顔になって叫んだ。
「ちょ、スイッチそれ酷くねえ!?オレ頑張ったんだよ!頑張ったオレを褒めて!あとあんまりみんな拍手で空気振動させないで!!」
「写真撮ろうや!」
ヒメコがそう言って携帯を掲げた瞬間、教室の扉が結構な勢いでがらりと開いた。
ばらばらばらばら。
もちろんトランプタワーは崩れ落ちた。
「「あああああああああああああーーーー!!!!」」
『( ´,_ゝ`)』
ボッスンとヒメコとスイッチは扉の方を向いた。そこにはいつもやる気のない担任がいた。
「おはようさん。どしたお前ら」
「チュウさんちょっと正座してくれへん?」
「どうした鬼塚。肩でも揉んでくれんのか。お〜気が効くねぇ」
「そこに座れっつっとんのや」
ばきばきと指を鳴らしながらヒメコがチュウさんに近づく。その背後にはどす黒いオーラが発生していた。
「ヒメ姉さま止めて!さすがにチュウさんオレらの顧問だから!スケット団潰れちゃうから!オレはもういいから!やめて!」
ボッスンがまた泣きそうな顔でヒメコに縋り付いた。それでもヒメコのスタンドはまだ治まる気配を見せない。
『チュウさん、それが今日来た転校生ですか?』
今にも爆発しそうなヒメコ、泣きだしそうなボッスン、それを愉快そうに不安そうに見つめるクラスメイト達、まだ肩を揉んでくれるのだと思っているチュウさん、そんな中崩れそうな均衡を破ったのはスイッチだった。スイッチの手はチュウさんの後ろにいる人物を指していた。
「あ、おお。そうだ。今日は転校生がいるからお前ら席に着け。特にスケット団の三人は迅速に席に着け。ん?なんでトランプが散乱してんだ?まあいい。とにかく席に着け」
スケット団の三人は大人しく席に付いた。トランプはまだ床に散らばっているがまあ、あとで片付けよう。
「そういうわけで突然だが転校生だ。家庭の事情でちょいと新学期から遅れた感じで入って来た。みんなイジメとか俺がめんどいからしないように」
教師なのにめんどいとかどういうことだというツッコミはあるが、クラスメイトは黙ったままだった。
なぜならまだ肝心の転校生が教室に入ってきてないからだ。
「ん?ああ、ほれ入って来い」
「はい」
チュウさんが廊下に向かって手招きするとようやくその人物は入って来た。
ボッスンが最初に思ったのは、でけえ、ということだった。その人物は170センチはあるであろう背丈で、それにしては妙に細い華奢な体つきをしていた。
ヒメコが最初に思ったのは、奇麗やなぁ、ということだった。その人物は抜けるような白い髪の毛をしていて、それが四月の光できらきらしていた。
スイッチが最初に思ったのは、やばいな、ということだった。その人物は異常なほど整った顔立ちをしており、これでは自分の実はイケメンというキャラがいまいち立たないかもしれない。
です。が名字でが名前です。遠くから来ました。部活に入るつもりは全くありません。人と話すのが苦手なので話しかけないで下さい」
それだけすらすらと言うと転校生はさっさと空いた席に座った。
「すまん、そこは今日休みの奴の席だ。お前の席はほれ、あそこ、変な帽子被った奴の斜め右横前」
「はい」
が自己紹介して席を間違えてボッスンの斜め右横前に座るまでが約1分15秒で行われた。クラスメイト達はぽかんとしてを見ていた。は何も言わず鞄を置いて前を見ていた。
よろしく、なんて一言も言わなかった。それどころか話しかけないで下さいと言われた。
でも声は妙に綺麗で高かった。皆と違うガクランもよく似合っていた。
(なんか、気に入らねえな)
(変わっとんなぁ)
(( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄― ̄)´_ゝ`)>>1逝ってよし Σ(´D`lll))
三者三通り様々な思いを抱えながら、スケット団のメンバーはを見ていた。
でも、多分こういう変わった人は、自分達と深く関わることになるに違いない、と思いながら。


二話へ

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2009/01/21
書きたかった逆ハーシリーズものをやっと書けました.。.:*・゜从n^◇^)η゚・*:.。.ミ ☆
そう言うわけで男装主人公物です。しかもクォーター設定です。美味しすぎるとか単純すぎるとか言わないそこ。聞こえてるから。
主人公ほぼ喋っていませんが最初は大体こんな感じです。というかちゃん出てくるところよりトランプのシーンが長かったってどういうこと?
初めてスケット団のメンバーをまともに書いた。スイッチの喋りに殺意が湧いた。やっとボッスンを辞書登録した。もう没寸なんて出てこないぜ。
まだまだ続きます。終りが見えません。






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