お仕事の邪魔です

(つばきさすけver.)


ひま、と39回目に呟いたと同時に、椿がため息をついた。
「少しは静かに出来ないのか」
「ごめん。つい」
「もう少しで終わるから」
「それ10分前にも言った」
「…もう少しだから」
ため息をつく椿がかわいそうになったので、私は黙ることにした。
ああ本当なら10分前には仕事は終わっているはずだったのだ。でもあのキャプテンアガータ…じゃねーや安形会長がやってきて、「お、椿。これもやっといて。あとあれもそれもこれもどれも。で、は俺がもらってく!かっかっか!」とか言っちゃうもんだから仕事が増えたのだ。椿も断ればいいのに、会長命令だから逆らえないのかもしれない。ちなみに私は会長の鳩尾に飛び蹴りして、会長の命令なんか消してしまった。

仕事をしている椿は必死で格好良くて、ああ私の彼氏がこの人で本当に良かったなあと思った。
短すぎる前髪も、長すぎる下まつ毛も、大きくて三白眼な目も、制服をきちっと着ているところも、左利きなところも、ああとにかくすべてが好きだ!
好き過ぎて好き過ぎて、私は時々絶望する。
椿がいないと私は駄目だ。椿がいないと私は死んでしまう。椿がいないと私は生きている価値がない。そこまで思考が働いて、そんなにも椿のことを思ってしまっている自分に気づいて、絶望するのだ。
椿はどうなのだろう?多分しっかり者の椿のことだ、そんなに私のことを思ってはいないだろう。
愛されてる、ってことは知ってるんだけどな。ちゃんと。
それに満足できずにまだまだ欲する私は、なんて我儘なんだろう!
椿と一緒にいた過ぎて、放課後も一緒に帰りたいから私はこうしてここに残っている。でも椿は仕事と格闘中だから私は置いてけぼり。くそ、安形会長の馬鹿。DOS。(ドブに落ちて死ねばいいのに)

「悪いな、
「ん?」
「ボクが仕事をするのが遅いから。早く帰りたいのだろう?」
「…椿の仕事は遅くないよ。あと、私早くおうちに帰りたいわけでもないよ」
ただ、椿に構ってほしいだけなの。
そう言うと、椿は書類から顔をあげてじっと私を見た。
椿の視線にやられてくらくらする。まっすぐに人を見つめることができる能力を持った椿はすごい。私はそんな力ないからすぐに椿の瞳にやられてHPが0になってしまう。あああああもうひん死なんですけどどうしてくれよう!
「そうか」
椿は私にしかわからない微笑みをすると、くしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
「仕事が終わったら、構ってやるから」

うん、と私は言うと幸せいっぱいで笑った。
椿に一瞬だけでもかまわれてすごくうれしい。椿は天才だ。私のすきまを一瞬で埋めてくれる。
だからもう少しだけ大人しく待とう。椿は天才だからきっとすぐに仕事を終わらせてしまうし、私のすきまを椿という存在で満たしてくれるだろう。
それが嬉しかったから、せめてものお返しに、椿の髪の毛にそうっと唇を落とした。



おしまい

「…
「なに?」
「そういうことをされると困るのだが」
「うえ?なぜに?」
「…(ああああボクも男だということをに分かってほしいのだがいやでもそんなの不純異性行為だし副会長でもあるボクが)」
「椿手ぇ止まってるー」


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結局仕事の邪魔をしているというちゃん。
椿の言う「構ってやる」=「手を繋いだり頭を撫でてやる」。それ以上のことなんて不純異性行為だからね!ちなみに安形の言う「構ってやる」=「うふんあは(略)(あれこの人生徒会長じゃなかったっけ)
ちゃんはさりげなく安形のことすごく嫌いですね。
そしてちゃんどこにいんのという感じですが、椿のいる机の上に座っています。
椿はもう注意するのに疲れたんだよ。














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