今日は節分だったので、あの人の家に豆を持って行きました。 もちろん、あの人の年の数の分だけ持って行きました。あの人の豆は私より一つ多いです。豆を多く食べる分だけ、あの人は私より大きいのでしょうか。 「はい、道流、あげます」 ピンポン押して一番に出てきたあの人に、豆をあげます。この人は目をぱちくりさせて私を見ます。 「ちゃん」 「今日は節分ですよ」 どうせ道流は豆を食べていないのでしょう? なぜか偉そうに私は言い、彼に豆を差し出します。道流はいつもの優しい顔で微笑み、私の頭をくしゃりと撫でます。 「うん、ありがとう」 その瞬間私は嬉しくて溶けてしまいそうになります。道流の笑顔に、優しさに、溶けて消えてしまいたくなります。でも溶けてしまうともう二度とその優しさに触れられないので、我慢します。 「ちゃんは食べた?」 「はい、もう食べました。だから今度は道流が食べて下さい」 「分かったよ」 私がじいっと見てるので、道流は不思議そうな顔をしました。 「ちゃん、寒いでしょ。良かったら家入る?」 「いいえ、もう夜も遅いですし、道流の家に入ると帰りたくなくなるからいいです」 「…ごめんね」 ちゃん女の子なんだから、あんまり夜遅いとおうちの人が心配するよと道流はもっともなことを言います。でも私はもう少し彼と一緒にいたかったので、大丈夫ですと言います。嘘つきな私だけれど、こんな嘘なら神様も許して下さるのではないでしょうか。 「道流が豆を食べたら帰ります」 「分かった」 道流は笑い、豆をひとつひとつ口に運びます。その度に私はこう言います。 「1歳。初めての誕生日です」 「6歳。小学校に入りました」 「13歳。中学一年生です」 そして18個目の豆を食べた時、私は言いました。 「18歳。私と出会いました」 私は真顔で道流を見ました。道流はやっぱり、すごくすごく笑ってくれていたので、私は白い息を吐きました。 「ちゃん、ありがとう」 「どういたしまして」 ぺこりとおじぎをして、私は帰ろうとマフラーを巻きなおしました。すると道流が私を抱きしめて髪の毛にやわらかくキスを落としてくれます。 私の顔はいっぺんに真っ赤になって、口を震わせながら道流を見上げました。 「ちゃんの、そういう顔、俺、すごく好き」 そしてもっともっとぎゅっとぎゅっとしてきます。私は本当にそんなことをされたら溶けてしまいそうなぐらい熱くなってしまいます。 「来年も、再来年も、そのまた次も、ずっと、ずっと、ちゃんと一緒に、年の数だけ豆を食べるよ」 道流がそんなことをあの甘い声で耳元で囁くものだから、私はすっかり溶けてしまいました。 ああ、溶けてしまったらあなたに明日会えないわ! ねえ、それでも、ねえ、今はとても幸せよ!! いつまでもあなたと
一緒に ------------------------------------------------------------------ 無理矢理季節ものに合わせてみた。 豆あんま好きくないんだけど今のところ年の数だけは食べられてます。 これもあと何年のことやら…┐(´∀`)┌ |