今日はクリスマスということで、俺とちゃんは二人で手を繋いで帰っていた。 二人の片手には大きなスーパーの袋。俺が重い方、ちゃんが軽い方、そして中身は今晩の食材だ。 「でも、ミッチーよかったの?」 「なにが?」 「生徒会の、集まり。今日今年最後の集まりするって言ってたじゃん」 「あーあれね」 俺は少し前の生徒会室での会話を思い出す。ついでに安形のにやにや笑い(その笑顔に黒いものが混じっていたのは、ああ、忘れてしまおう)も思い出してそのまま打ち消す。デージーちゃんの「CSSS!(クリスマスにサンタに刺されて死ね!)」という言葉も。 「そんなわけで、生徒会メンバーは本日美森んちでクリスマスパーティー。はいけってぇー」 安形がだるそうに言った。こいつは言い出しっぺのくせに、いつも行動する時は面倒臭そうだ。 「あ、それ、俺行けないから」 安形の言葉をすぐに打ち消して俺は鏡を見ながら前髪を直す。もうすぐちゃんに会うからきちっとしておかないとな。 「どうしてですか榛葉さん。生徒会の集まりは全員参加ですよ」 「だってそんなん今日聞いたし。今日俺用事あるんだ。ってことで許してよ椿ちゃん」 「あらあら、今日は榛葉さんのファンコンサートでもあるんでしょうか?」 「SSS(そのまま死んでしまえ)!」 「用事を言え道流。用事次第では…許してやらないこともなくはなくない」 「それどっちなの!?結局許さないの!?」 「で、何なんですか榛葉さん」 「ちゃんとデート」 ぴしりと生徒会室の空気が固まる。俺はぱちんと鏡を閉じた。よしばっちり。さあちゃんを待たせちゃ可哀想だし、早く行こう。 「…道流、お前、今、」 「榛葉さん…今、その」 「あらあら」 「CSSS!」 がたりと椅子を後ろに引き立ち上がる。ひらひらと手を振りみんなに微笑みかける。けれどそんなことで場の空気は戻ったりしない。安形のにやり笑いがどうしてか黒く見えるのが恐ろしいし、椿ちゃんの三白眼の目が妙にぎらぎらしているのが嫌だし、ミモリンが入れている紅茶がどばどば溢れているのにも気づかないのも怖いし、デージーちゃんの目が見えないのもぞっとする。 でも俺は、あくまでも笑顔を崩さずに言ってやった。 「ではみなさん、良いクリスマスを。メリー!」 「いいのいいの。生徒会の集まりなんか」 多分新年一発目の新年会で俺は殺されることになるだろうけれども、そんなことももう、どうでもいいや。今はこうして二人で手をつないで歩いているだけでじゅうぶん。じゅうぶんすぎるクリスマス。ああ、本当にサンタに刺されて殺されてしまうんじゃないだろうか。気をつけよう。 「あ、見てミッチー」 ちゃんが指さした先には十円ガムのガチャガチャがあった。懐かしいと笑うちゃんがかわいかったので俺はおつりから十円を入れてあげる。いいの?と言う彼女に俺は笑って頷いた。 がたがた、ごとん。 気持の悪い緑色のガムが出てきてちゃんは嬉しそうにそれを口に入れた。 「ミッチーのもしてあげるね!」 と自分の財布からもう十円出して、回して俺の口に押し込む。一瞬見えたそれは赤色だった。 「ありがとう」 「こっちこそ。ありがとう、ミッチー」 にししと笑う彼女が可愛くて、俺はやっぱりへらりと笑う。 口の中のガムは林檎味の本領をじわじわと発揮し出し、俺の口の中は爽やかな香りでいっぱいになった。きっとちゃんの口の中も今、おんなじ香りなんだろう。そう思ったらなんか顔が赤くなってしまった。 「ああ、もう、味がなくなっちゃった」 「え?もう?ちゃんどんだけの速度でガム噛んでんの」 「多分目に見えない速さで」 「すごいね」 「ね、だから、ミッチー」 突然彼女が繋いでいた手を離し、俺の首に腕を巻きつけてきた。そしてそのまま唇に柔らかいものがあたったと思うと、口の中になにか固柔らかいものが侵入してきた。それは林檎の残りかすのような味がして、俺はぱちくりと彼女を見た。 「うへへ」 変な風に彼女は笑った。 彼女はまたガムをくちゃくちゃと噛んでいて、おいしいと言った。 「ミッチーは、噛むのが遅いんだね」 「ちゃんのガム、全然味しねぇ…」 「こうかーん!したの!」 きゃははと彼女は笑って駆け出して行った。俺は彼女の緑色のガムを噛みながら、赤色のガムを噛んでいる彼女を追いかける。 仕方ない、このお返しに彼女に思い切り抱きつくことにしよう。 ガムはくずかごに、
愛は俺の中に ------------------------------------------------------------------------------------ 恥ずかしいよねー!分かってるよそんなことー!分かってんだよー!みんな、こんなカップルがいても温かい目で許してあげてね!無理だよねごめん! 。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ(←泣きながら逃亡の田仲さん) 久々にタイトル自分で考えますたんぐ。恥ずかしいタイトルですね! なんかまともなミッチー書いたの初めてな気がするんだけど…あれ、錯覚? メリークリスマス!! |