全く、よく食べる子だ。俺は呆れながら彼女を見る。 ちゃんの前に並べた皿は次々に空白になり気付く端から彼女の口に吸い込まれていった。 ばくばく、もぐもぐ、むしゃむしゃ、そんな擬音がよく似合う。でも実際にはちゃんはほとんど音をたてずに食べているから、俺と彼女の間にあるのは沈黙だ。あと、何枚かの白い皿と。 ぼんやりとこのまま、食べる彼女を見てもいいんだけれど、きっとこのまま一日が終わってしまうだろう。そんなのはもったいない。だってせっかく、せっかくあのちゃんが来てくれたんだから! ちゃんは椿ちゃんと同じクラスの女の子で、とても可愛くて、とても小さくて、とても笑顔が素敵で、とても明るくて、とても可愛くて(あれ、二回言ったかこれ?)、とにかくああ、俺は彼女が大好きなんだ! でも、そんなちゃんに恋するのは俺だけじゃなくて、もちろんその中には椿ちゃんや藤崎くんや、そして恐ろしい事に安形までいる。 俺はとてもモテるけれど、そんなわけで彼女になかなか告白することができない。 よく考えたら、告白することなんて初めてだ。こっちから女の子を好きになったことだって初めてだ。今まで付き合った女の子だって、じゅうぶん好きだったんだよ。でも、さぁ、こんなにも一人で恋焦がれることは初めてなんだ。(僕は、初めて女の子たちの気持ちを知りました) 「ごちそーさまでした!」 両手をぱんっと合わせてちゃんは素敵な笑顔で笑う。気付けば皿は全て空になっていた。どうやらようやく満腹したらしい。俺は苦笑いする。 「美味しかった?」 「そりゃあもう!」 ミッチーのご飯は素敵だね、と彼女は満足そうに言う。他の人よりも料理が上手でよかった、と心の底から思う。 「でもさ、私だけ食べてるのって悪いと思ったんだよね」 「そんだけ食べて、ようやく気付いたの?」 目の前には、ゆうに十人分はあるだろう空っぽの皿たち。 「ごめんごめん。でもさ、今度は、私がミッチーにご飯作ってあげるよ。ミッチーはあんま食べなさそうだから…三人前ぐらいかな?」 彼女の食の定義には正直ついていけない。あまり食べなさそう、で三人前っていうのはどういうことなんだろう。 まあいいや。せっかくだからお言葉に甘える事にしようか。 「いや、俺は一人前でいいよ」 「そんな!」 そんなに小食だなんて思わなかったわ!とちゃんは続けて叫んだ。君が食べ過ぎなんだよ、とは言わなかった。 「いいんだよ」 俺は笑った。彼女のいろんなことが可笑しくて、可愛くて、笑った。 小さく愛しい何もわかっちゃあいない君。 君のその無知は時に残酷に僕らを苦しめるんだ。 でも、ねえ、そんな君に苦しめられてもそれさえも僕たちは恋しく思うんだ。(恋しいから、苦しいんだ) 「じゃ、じゃあ、とびきり美味しいものを作るねっ。あ、でもミッチーよりはへたくそかもしれない…ごみんミッチー!やっぱ私中途半端に美味しいものしか作れないかも!」 「ううん、君は、俺にとってとびきり美味しいものを作れるよ」 え?と言うちゃんに、俺は椿ちゃんや藤崎君や安形の顔を重ねた。 なあ、君たちだって怖いんだろう? このちっぽけな女の子に逃げられることが怖くて怖くて仕方がないんだ。 俺だって怖いよ。 でも、こうして空虚な皿を並べているだけじゃあ、俺は彼女に近づけないと思うんだ。 「な、なに?それはなにっ?何が欲しいの?ミッチー!」 必死に聞いてくるちゃんはとても可愛かったので、俺はにこりと笑って答えてあげた。 その答えを聞いて、彼女はとても真っ赤な顔になった。 そんな君ごと、ああ、全て食べてしまいたい! 「じゃあ愛を一人前」
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