あいことばは





「暇」
「だったら」
「「宿題をしろ」」

でしょ?
と、私は彼に声をダブらせて、そのまま頭を思いきりのけぞらせて、彼を見た。
さかさまの世界に彼がひっくり返って座っている。
ソファーにもたれた私の首がぐきぐきと言う音が聞こえたけれど、気にしない。

「…そんな体勢をしていると、頭に血が昇って今より更に馬鹿になるぞ」
「なっ、それ、私が馬鹿っていうことじゃん!」
「今更気付いたか」
「玄の馬鹿ー、あほー、ぱっつん!」
「俺の前髪はぱっつんじゃない。ただきちんとまっすぐ切りそろえているだけだ。
……そんなことより、なぁ光、大人しく…」
「宿題なんてしないからね!」
「…」

はぁ、とため息をつく玄。
玄のほっぺたには大きな傷がある。それは昨日喧嘩の時に私がひっかいた傷じゃなくて、随分昔からある傷で。
ねぇ、こんなこと思うなんて変だけど、顔に傷があってよかったよ。
もし何もない普通の顔だったら、私、あなたを見てるだけでしにそうになっちゃうよ。

「玄ー暇ー、あそんでー」
「暇じゃないだろう!宿題は…」
「そんなのあとで」
「あとであとでとしていたら、こないだのようなことになる」
「玄が手伝ってくれるから大丈夫」

そう言って、私は顔をあげて、ソファーの背もたれの方に体ごと向けて、きちんとソファーの上に正座して彼と眼を合わせる。
そして笑う。

どうしてだろう、私が笑うと、彼はいつも、困ったように笑いながら、結局私の言うことを聞いてくれるから。


「ちょっとでいいの。遊ぼう?」
「……少しだけだぞ」
「やったー。他の人も呼んでくるねっ」
「なっ…(別に呼ばなくていいのに…)」
「ちょっと待っててー」
「おい光…」
「あ、そうだ」

扉の手前で、光は思い出したように止まって振り返る。

「玄、」


「「大好きだよ」」



二人の声が重なった。
だろ?と、玄はいつもの表情で言った。
光は少し驚いていたけれど、やっぱり、笑った。

重なった言葉はとても優しくて、いとおしい。
私はいつものようにこの台詞を繰り返すけれど、あなたもあいことばのように言葉を心の中で繰り返しているのかな。


大好きだよ。


こんなに短いけれど大切な私たちの



『愛言葉』



本当は王国心の夢として書いてましたー。でも王国心は運営大変だし検索避けするのめんどくさいよねげふんげふんということでオリジナルに変更。
変な名前ー。(言っちゃだめ)本当はあれです、最楠さんとして読んで欲しかったのです。
光ちゃんは玄が大好き。でも玄は光ちゃんのこともっともっと大好き。そんな二人。







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